バリ絵画の世界

すべての物事はつながっている

バリ島の歴史
バリはヒンドゥー教の島であるが、インドから伝わったものがバリの民間信仰と結びついて、独特の宗教となっている。アガマ・ヒンドゥー・ダルマ教と呼ぶ。
インドのヒンドゥー教は多神教だが、バリでは、最高神サン・ヒャン・ウィディが唯一神であり、姿形を変えていろいろな神になるという教義となっている。これは、イスラム教国であるインドネシアの憲法(パンチャ・シラ)第1条にのっとって、協議の結果近年(1962年)、あらたに作り出された神である。

■主なバリの神々

イダ・サン・ヒャン・ウィディ・ワサ(Ida Sang Hyang Widhi Waca)
すべての生き物の源であり、すべての神々の根源であり、宇宙におけるすべての源であり、唯一神である。
時によって、シワ、ブラフマ、ウィシュヌなどの神の姿になって現れる。

デワ・ブラフマ(Dewa Brahma)
世界に存在するすべてのものに彼の力が宿っている。生命の源である。4つの顔と手を持ち、白鳥にのって移動する。バリでは村の中央にある寺院プラ・デサでブラフマ神へのお祈りが行われる。

デウィ・サラスワティ(Dewi Saraswati)
知識と表現、洞察を司る女神である。その優美な姿は精神知の高さを表している。4本の手を持つ。それぞれの手は楽器(芸術の象徴)、ロンタル(神聖な知識)、ベル(科学)、蓮の花(サン・ヒャン・ウィディの神聖さ)を持つ。彼女のそばにいる白鳥は善悪を見分ける能力を表す。なぜなら、白鳥は泥から水を分離させることができるからだ。

デワ・ウィシュヌ(Dewa Wisnu)
宇宙における生命の守護者である。彼の力は、デウィ・スリ神と世界のすべての生き物に幸福を与える女神ラクシュミーに支えられている。4本の手を持つ。ガルーダに乗って移動する。
村の北にある、もっとも重要な寺院プラ・プセでウィシュヌ神へのお祈りが行われる。


デウィ・スリ(Dewi Sri)
稲の女神である。これは、ラーマヤナ物語のなかで、ラーマがシータの純潔を試すために火のなかへ、彼女を入らせ試した話による。シータが火のなかで燃えると、ラーマが水になってなかに飛び込む。シータの灰からたくさんの米があふれ出た。これはシータが米をつかさどるデウィ・スリの生まれかわりであり、水をつかさどるデワ・ウィシュヌがラーマであることを証明した。それ以来、デウィ・スリとデワ・ウィシュヌはともに暮らしていて、だから米も水がなくては育たないのだと信じられている。
デワ・シワ(Dewa Siwa)
分解の神である。ブラフマが創造したものを元のかたちに戻す。村の北側にある、死者の寺院、プラ・ダラムでお祈りが行われる。葬儀(ガベン)はこのプラ・ダラムで行われる。

ガナパティ(Ganapati)
シワ神の息子である。ガネーシャとして知られる。安全と健康を司る。彼の大きなお腹は、洞察力の象徴であり、折れたキバは自制の能力の象徴である。手に持った斧は暗闇をクリアにするためのものであり。ベルは純粋さのシンボルである。

ボマ(Bhoma)
ウィシュヌ神と女神プルティウィ(大地の母)の子供である。すべての木々や植物のなかで形をなす。ボマの顔は家や寺院の入り口に彫刻されている。やってくる人が良い人か悪い人かによって、友好的にも恐ろしくも見える。ボマの周囲の植物の彫刻は人間の魂を表す。家や寺に入るすべてのものが、ボマから恩恵を受け取れるよう願っている。