バリ絵画の世界

バリ島の歴史
※日付は正確なものではなく、体験した数日を代表したものと受け取ってください。
7/4バリ家族との夕げ        7/6デンパサール散策  
7/8舞台三昧             7/9美男美女コンテスト
7/11子供たちとの出会い     7/12子供たちと一緒に
7/14マス村の青年会誕生祭   7/15一人旅ならでは
7/16子供たちとの別れ       7/17カマサン村の日々
7/18スマラプラ小旅行       7/19ウブド村へ
7/20白魔術師さんとの出会い   7/21シンガラジャ旅行
7/22ウブド村での絵画レッスン  7/26日本からの友達とニョマンさん宅
7/28イサ村              8/4バリ島に1ヶ月滞在して       
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2005年8月4日
バリ島に1ヶ月滞在して

バリ島も、1ヶ月もいると外国にいる感覚が薄れてくる。目に見えるものが日常になってくる。同じところに滞在しているとなおさらだ。いつも同じ村の人たちと顔を合わせ、たわいもない話をし、市場のおばちゃんと値切り交渉をし、おうちに招かれてご飯を食べる。道を歩けば「今日はどこいくのー?」と声がかかる。そうしてバリの人たちの悩みを聞いていると、同じ人間なのだと実感する。そうしてだんだんと外国にいる違和感がなくなってくるのだ。同じアジア人で親しみやすいという理由もある。そして、日本と同じ多神教であること。自然にたくさんの神様が宿っているからそれらに毎日祈りを捧げる精神。ひとつひとつ、通じるものがある。日本人が失ってしまったものも残っている。私を惹きつけてやまないのは、こうしたつながりを感じるからだと言える。絵画をはじめとして、生活習慣や人に接する態度、思いやり、そのひとつひとつに懐かしさと親しみやすさを感じる。バリと出会うことで、よりいっそう日本の文化が見えてきたように思う。それはまた、バリの人にとっても同じようだ。日本の文化や歴史に興味を持つバリ人は多い。理由には「日本とバリは似てる」という人が少なくない。「もっと日本の仏教について知りたい」とか「お寺について知りたい」「日本のお祭がどんなものか知りたい」あげていくときりがない。歴史的でなくとも、専門家によって証明されていなくとも、たしかにバリ人も日本人も感じる「つながり」があると実感する。この気持ちを大切にして、よりいっそう輪を拡げていけたらと思う。

日本へ帰国を目前に、絵画レッスンでお世話になったプトゥ先生と家族に別れを告げた。子供たちも元気いっぱい、奥さんはやさしく心温かい人で、そして絵をこよなく愛する先生と出会えてほんとうに幸せだったしたくさんのことを学んだ。彼らのなかにあって、愛するって生きていくなかでとてもとても大切で嬉しいことなんだと感じた。愛があれば笑顔が生まれて、思いやりが生まれて、嬉しい気持ちが生まれて、生きることに積極的になれる。

ニョマンさん一家にも別れを告げ、みんなに見送られながら空港へと向かった。途中、道すがら手を振ってくれる村の友達に出会い、感謝の気持ちでいっぱいになった。1ヶ月間、ほんとうにいろんなひとに助けられた。旅の案内から送り向かいまでワヤンにはお世話になりっぱなしだった。見ず知らずの外国人であるのに、私はバリに来るまでこんな親切に出会ったことがなかった。そこにはいろいろな思惑もあるかもしれないけれど、心を暖かくさせてくれた出会いに感謝している。絵を習うことや芸能に触れることが目的ではあったけれど、それ以上にたくさんの物事に触れ、たくさんの人に出会い、嬉しかった。

人と人とが出会うとそこに何かが確実に生まれているのを感じる。「つながり」あって、私たちはお互いに共鳴しあいながら生きている。生きるということは共鳴しあうということなのかもしれない。そこに調和が生まれて、いろいろなリズムとメロディーが奏でられる。そうして、自分に合ったハーモニーを求めてゆく。たくさんの人と人とが共鳴しあうのならば、愛と平和に満ちたハーモニーがそこかしこに響きますように。

2005年7月28日
イサ村

バリ滞在ももう終わりとなるころ、ふと思い立って私はウブドから車で1時間離れたイサ村へ行くことにした。イサ村はバリでもとても美しい田園がひろがることで有名な、けれど観光地としては意外に知られていない場所だ。バリ伝統絵画の原形ともなる絵を描いたヴォルター・シュピースが一時期住んだ場所でもある。ワヤンに車をまわしてもらい出かけた。ワヤンが午後から予定があるというので、村をゆっくり見てまわることはできなかったのだけれど、一番見晴らしがいいというバンガローに連れていってもらった。

バンガローの眺めのよいところをスタッフに案内され、フルーツジュースをサービスしてもらった。天気はあいにく曇だったけれど、美しい段々畑が一面に広がって美しかった。ハイビスカスが咲き、空気もおいしい。こんなところで絵を描いて暮らしていたシュピースがうらやましい。バンガローは山の斜面にあるので上まで登って景色を楽しんだ。ここのバンガローの経営者は旧王族の人で、私が訪れたときにちょうど出会えた。まだ若い青年だった。私は挨拶と握手をした。ワヤンは「彼はめったにいないからラッキーだよ!」と驚いていた。バリはインドネシア領に統一されるまでは、8つの国にわかれていてそれぞれに王様がいたのだ。その王族たちはそれぞれ生活の形を変えて、バリに住んでいる。8つの国は今は県になっていて、その県知事という形でその地域の統括をひきついでいる王族もいるようだ。まだまだ散策したいところだったけれど、私はイサ村を後にした。今度は一日かけてゆっくりと歩いてみたい。